アメリカボクシング界から見た「メイウェザーvsマクレガー」/杉浦大介

本当に実現してしまうフロイド・メイウェザーvsコナー・マクレガーのビッグファイト!UFCのスーパースターが無敗のまま引退した天才ボクサーにボクシングルールで挑むという世紀の対決。PPVを売りまくる話題性の高い両雄だけにビジネスとしての大成功は約束されているが、この異例の対決をアメリカボクシング界はどのように見ているのだろうか。ボクシングやMLB、NBAなどを精力的に取材しているニューヨーク在住のスポーツライター杉浦大介氏に話を聞いた。
 

 

 


――アメリカボクシング界はメイウェザーvsマクレガーにどのような反応を示しているのでしょうか?


杉浦 かなり前から「やる、やらない」と話題になってましたし、発表自体が晴天の霹靂というわけで
はなかったので、さほど驚きはなかったんですね。覚悟はできていた、という言い方は変ですけど(笑)。ただ、ほとんどのボクシングファンは好意的に捉えてはいないですね。


――やっぱりそうですか。


杉浦 否定的、無視、無関心……いや、関心は持ってるかな。いずれにせよ否定的なボクシングファンは多いですよね。「ボクシング界を代表するメイウェザーがこんなに試合に出るべきなのか?」という声が大半で、ファイトというよりは「イベント」として見られていますね。
 

――賛否になるだけに注目度は高いんですか?


杉浦 いろんな意味で凄く高いです。この試合の対象は、普段はボクシングを見ない一般のスポーツファンや、ビッグファイトしか見ない人たちだと思うんですね。


――ターゲットは一般層なんですね。


杉浦 ボクはMMAには詳しくないので、MMAのコアファンがこのカードをどう捉えてるかはわからないんですが、どんな試合でも見るボクシングのコアファンではなく、1年に1回大きな試合があれば見ようとする人たちが注目しています。なのでファイトではなくイベントという捉え方がされてますし、よく例えられているのがモハメド・アリvsアントニオ猪木なんですね。


――ああ、アメリカでもそうなんですね。


杉浦 アリvs猪木は異種格闘技戦で、今回はボクシングルールなので厳密に言えば同じではないんですけど。


――杉浦さんはメイウェザーvsマクレガーが実現すると思ってましたか? 


杉浦 うーん、当初はやるとは思わなかったですよねぇ。ボクシングとMMA、同じコンバットスポーツとはいえ、まるで違うものじゃないですか。最大の障害としてアスレチックコミッションが認めるはずがないと思ってたんですよね。


――49戦無敗の元ボクサーと、ボクシングデビュー戦のMMAファイターのマッチアップですし。


杉浦 これだけのキャリア差のある選手同士を対戦させて、もし事故が起きたらコミッションの責任問題になると思うんですよ。日本でいえば10回戦ボクサーとデビュー戦のボクサーは試合はできません。それは日本のボクシングコミッションがOKを出さないからです。


――メイウェザーvsマクレガーもアスレチックコミッションが認めないと思っていたら……。


杉浦 当初はコミッションも否定的なコメントを出していたんですよ。「難しいだろう」と。それが手のひらを返したように認めてしまった。その背後には、この試合が実現することで莫大なお金が動き、ラスベガスの街全体が潤うということもあるんでしょう。マクレガーはボクシングの実績はなくともMMAというコンバットスポーツのチャンピオン。打たれ強さはあるということで最終的にGOサインは出たんですけど、「常識がビジネスに負けた」という報道がされてますね。


――経済効果は凄そうですよね……。ところでいまアメリカのボクシング人気はどうなんでしょうか。


杉浦 PPVの数字はよくないですね。2015年5月に行なわれたメイウェザーvsパッキャオ世紀の一戦は、一般層を巻き込んだことでPPVは460万件を記録したんですけど。


――とてつもない数字ですよね(笑)。


杉浦 あの試合以降、PPVビジネスは下り坂なんです。メイウェザーvsパッキャオは試合内容が低調だったことで、かなり酷評されてしまったんですよね。事前に盛り上がりすぎたその反動というか、「二度とボクシングは見ない」という人が多かったんです。
 

 

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